発達障害を抱えている人が安定した一人暮らしを行うためには

 以前、どこかで申し上げたことがあるかと思いますが、実のところ、私は発達障害アスペルガー症候群、あるいは広汎性発達障害と呼ばれるもの)を抱えております。色々と苦労をしたことはあるのですが、最も手こずったことの一つは、いかにしてここ数年ずっと置かれている状況である独身生活を成り立たせるか、というところだと思います。

 私自身は、発達障害(少なくともアスペルガー症候群)の診断を受けている人は、安易に一人暮らしを選択すべきではないと思っています。親や兄弟などが発達障害について理解を示してくれようがくれまいが、家族の存在というのは想像以上に大きな支えになっているからです。一人暮らしをきちんとやってゆくためには、掃除や洗濯といった身の回りのことはもちろん、お金や物の管理もしっかりと行わなければなりませんし、何より一日や一週間のスケジュールを、社会的な流れに合うように組み立てていかなければならないのですね。家族と一緒に暮らしている分には、家事などの一部を誰かが負担してくれるでしょうが、一人だとそういうわけにはいきません。

 それでも、家族との折り合いが全くつかなかったり、もしくは両親ともに死別してしまったりするなどして、止むを得ない事情で一人暮らしをせざるを得なくなってしまったとき、私たち当事者はどういうことをすれば良いのでしょうか。この記事では、私が生活を成り立たせるためにやったことの一部を具体的に記してゆくことにします。同じことで悩んでいらっしゃる方々の参考になれば幸いです。

まずは誰かと気軽に相談できるようにする

 一番初めにやっておいた方が良いことは、自分の身の回りのことなどを気軽に相談できるような関係を構築することです。当然のことながら、発達障害に理解のある方をきちんと選び抜かなければなりません。理解があるのであれば普通の友人でも構いませんが、私がおすすめしておきたいのは、医療機関や福祉事業所の方々を頼りにしてみる、というところです。

 例えば、医療機関ならば、主治医となってくださっている方以外にも、ソーシャルワーカーさんや精神科デイケアの方々がいらっしゃいますし、福祉事業所ならば、いわゆるB型作業所やA型作業所、就労移行支援事業所、さらには相談支援事業所の方々が頼りになるかと思います。これらのうちどれか一人か二人に絞らないといけないというのではなく、できるだけ多くの人と関わって、色々な分野について相談できるようにしていきたいものです。

 相談できるようになることで何が良いのかというと、自分の困っていることを吐き出すことでストレスの軽減になる他、誰かが一緒に考えてくれるということが安心感につながる、というところです。困りごとは誰にでも起こりうることですし、特に医療機関や福祉事業所の方々はある意味で相談を仕事にされているのですから、何かあったら遠慮なく相談するようにしてみてください。

障害者手帳自立支援医療の申請はできるだけ早めに

 すでにご存じの方も多いかと思いますが、現在の制度では、発達障害を抱えている方でも障害者手帳(正確には「精神障害者保健福祉手帳」など)を取得することが可能となっています。だいたいは2級か3級だと思いますが、これでも社会面・制度面で優遇されるのは間違いありませんので、取得しておいて損はありません。ただし、申請には診断書が必要となりまして、これが結構な額になりますので、そこだけは注意しておいてください。

 また、お住まいの地域によっては、精神関係の通院にかかる費用のうち、いくらかを減免してくれる制度(いわゆる「自立支援医療」)を採用しているところがあります。詳しくは主治医かソーシャルワーカーに尋ねてみると良いですが、いずれにせよこの制度を採用している地域ならば、活用しない手はありません。これにも診断書は必要となりますが、申請しておいて損はないかと思います(特に薬代が馬鹿にならない人にはうってつけだと思います)。

 こういった、身近に利用できる制度をどんどん利用してゆくことが、生活を成り立たせる上では重要なステップになります。障害者手帳自立支援医療の認定がおりるまでには時間がかかりますが、それならばできるだけ早めに主治医やその他医療機関の方々と相談しておくようにしましょう。

障害年金、取れるなら取っておこう

 発達障害も立派な障害のうちの一つなので、障害年金の受給対象になっています。なので、かなり根気のいることではありますが、もし可能ならば障害年金にも申請をしてみてください。ただし、発達障害(というか精神関連)の場合は、一定以上の所得がある人は受給できないようになっているとのことなので、注意が必要です(まずは相談してみてはいかがでしょうか)。

 ところで、「かなり根気のいる」と書きましたが、障害年金は申請の受理までには本当に手間がかかります。私も申請に相当な時間を費やしました。特に、発症からの流れ(発達障害は生まれつきのものなので「生育歴」も同然)を簡単に記さなければなりませんから、面倒なのは間違いないです。この他にも、初診日の特定をしなければならなかったり、住民票の写しを取りに役所まで行かなければならなかったりと、やることがてんこもりなので、自分一人で全てを終えるのは至難です。こういう時こそ、誰か(医療機関ソーシャルワーカーなど)に協力してもらいましょう。

 障害年金は申請するときこそ、このようにかなりの手間がかかりますが、一旦通ってしまえば、立派な基盤になってくれるのは間違いありません。それに、実際に審査にかけてみるまでは分からないわけですから、まずは申請の方向で動いてみてはどうでしょうか。

職場は自分の働きやすいところを選ぶこと

 働くことは生活を成り立たせる上で大事なことですが、ここで重要なのは、自分の生き方や考え方に合った職場を選ぶことです。完全に合致している必要はないですが、できるだけ自分のやりやすい場所を見つける必要があります。少なくとも、収入が多いとか少ないとか、有名だとか無名だとか、そういった観点だけで職場を探そうとすると、確実に失敗します(仮に就職できたとしても、おそらく長続きしません)。

 ですから、いきなり一人で職場を探そうとするのではなく、作業所や就労移行支援事業所の方々(あるいは障害者にかかわる公的機関でも良いですが)に協力してもらって、自分に合った職場を見つけ出すことが最適ではないかと思います。そこで導かれるのは、もしかすると自分が全く知らない企業であるかもしれないですし、もしくは有名企業の特例子会社かもしれないですが、いずれにしても、少しでも自分が長く働ける場所を選ぶことが大切です。

 ちなみに、もし障害をオープンにして就職しようという場合(私自身もそうですが)、障害者手帳を持っている方が圧倒的に有利です。詳しくは「法定雇用率」で検索していただければと思いますが、障害者手帳を持っていないと勤労している障害者とは見なされません。中小企業ならともかく、大企業ではその点が大きく問題になってくるので、ここでも障害者手帳を取る意味はあるというものです。

終わりに

 まだまだ書きたいことはありますが、とりあえず上の4点を抑えておけば、発達障害アスペルガー症候群)を抱えていても、何とか働きながらの一人暮らしを成り立たせることはできるのではないかと思います。また、私がそうなので「アスペルガー」と書きましたが、おそらくADHDの場合も同様なのではないでしょうか。

 ただし、冒頭にも書いた通り、一番良いのは、誰か家族と一緒に暮らすことです。一人暮らしに出るのは最終手段くらいに思っておいた方が身のためです。それでも、どうしても一人で生活せざるを得なくなってしまったときには、どうか無理をせずに、周りの人に頼ってみてください。

 発達障害を抱えている人も、その人なりに立派に生きる権利はあります。用意されている社会資源はそのためのものです。ぜひとも活用してみてはいかがでしょうか。